設計の試行錯誤を変えた、新たな熱流体解析ソフトウェア

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基礎編3. 放射3.1 放射熱伝達(1)平板

このトレーニングで学ぶこと

電子機器では、素子の冷却効果を高めるために下図のようなヒートシンクが数多く使用されています。ヒートシンクの形状は、ベース板の上に金属の板が並べられた溝形(あるいは櫛形)が一般的です。また、ヒートシンクの表面は黒色塗装などにより放射率※を大きくする工夫がなされています。
 ここでは、金属板表面の黒色塗装がどの程度有効なのか、すなわち表面放射率が変化するとどのように冷却効果が変化するのかを考えてみましょう。

※放射率
 放射とは、電磁波(主に赤外線)により熱が伝達される現象のことです。物体が熱放射で放出する電磁波のエネルギーと、同温の黒体が放出する電磁波のエネルギーとの比を、放射率と呼びます。
 なお、外部から入ってくる全ての電磁波のエネルギーを吸収し、かつ熱放射できる物体のことを黒体と呼びます。

問題1初級
下図のように、100mm角で厚さ1mmのプリント基板(熱伝導率k=1W/m・K)が無風状態の空気中に垂直に設置され、発熱量8W(単位体積あたり発熱密度800,000W/m3)で一様に発熱しています。
 基板表面の放射率εがそれぞれ(a)0.0, (b)0.5, (c)1.0 の場合、基板の表面温度は以下の@〜Bのどの順番になるでしょうか。ただし、基板の表裏は同じ放射率とします。
     @(b)<(c)<(a)
     A(a)<(b)<(c)
     B(c)<(b)<(a)

放射率とは物体表面から電磁波(主に
赤外線)の放出しやすさを表す指標だよ!

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答1
答えはBです。

FlowDesignerで検証

基板からの熱エネルギーの一部は空気の対流(ここでは自然対流)によって空気中に放熱されますが、一部は電磁波となって基板が見えている筐体の壁に放熱されます。
 放射率が大きい物体ほど電磁波による放熱効果が大きくなるため、放射率が1.0である(c)が最も温度が低くなります。

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問題2初級
下図のように、100mm角で厚さ1mmの2枚のアルミ放熱板(熱伝導率k=200W/m・K)が無風状態の空気中に垂直に設置され、発熱量15W(単位体積あたり発熱密度1,500,000W/m3)で一様に発熱しています。
 2枚の放熱板表面の放射率εが1.0の場合、放熱板の間隔を50mmから10mmへと狭くすると、2枚の放熱板の平均温度はどうなるでしょうか。ただし、放熱板の表裏は同じ放射率とします。
     @ 温度は変化しない
     A 温度は上がる
     B 温度は下がる

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答2
答えはAです。

FlowDesignerで検証

放熱板からの熱エネルギーの一部は空気の対流(ここでは自然対流)によって空気中に放熱されますが、一部は電磁波となって向かい合う放熱板表面に伝達されるだけではなく、放熱板間の隙間から筐体の壁にも放熱されます。
 放熱板同士の間隔が狭くなると、隙間から筐体の壁へ放射される熱エネルギーが低下するため、結果として2枚の放熱板の温度は上がることになります。

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問題3中級
下図のように、100mm角で厚さ1mmのアルミ放熱板(熱伝導率k=200W/m・K,放射率ε=0.1)が無風状態の空気中に垂直に設置され、発熱量15W(単位体積あたり1,500,000W/m3)で一様に発熱しています。
 このアルミ放熱板を電気絶縁のために、厚さ1mmの樹脂(熱伝導率k=0.1W/m・K,放射率ε=0.95)で覆うと、放熱板の平均温度はどうなるでしょうか。ただし、放熱板の表裏は同じ放射率とします。
     @ 温度は変化しない
     A 温度は上がる
     B 温度は下がる

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答3
答えはBです。

FlowDesignerで検証

アルミ放熱板を熱伝導率の小さな樹脂で覆うことによって、断熱性能が高くなりアルミ放熱板の平均温度は上がるように考えがちですが、ここでは放射熱伝達の変化に注意する必要があります。
 樹脂がない場合、アルミ放熱板の放射率が小さいため、熱エネルギーのほとんどは空気の対流(ここでは自然対流)によって空気中に放熱されます。
 一方、樹脂がある場合、樹脂表面の放射率が大きくなるため、熱エネルギーは自然対流と放射の両方の熱伝達作用で空気中に放熱されることになります。結果として、樹脂で覆った方がアルミ放熱板の温度は下がることになります。
 この現象は熱抵抗の考え方で説明することもできます。詳細は理論式をご参照ください。

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